日本空手協会の基本として、攻撃の際にはヘソは前を向けて、受けの際にはヘソは横を向ける。
ところが、移動基本で前に追突をする場合、突いた方の肩が前に出て、その分、引手側の肩が後ろに行きやすいため、腰が半身になりやすい。
移動基本の二本目以降、つまり、追突した状態から次の追突の場合には、ヘソが前を向いた状態から、ヘソを前に向ける状態への移動なので問題はないが、一本目の下段払いから追突への移動の場合、ヘソが横を向いた状態から、ヘソを前に向ける状態となり、この際にヘソが前で止まってくれずに横を向いてしまうことがある。
左足前の下段払いを構えたところからの追突の移動基本を二挙動に分ける場合、
- 一挙動目で右足(後ろ足)を左足(前足)と同じ線上まで持ってくる。
- 二挙動目で右足を前に出し、右足前の前屈立ちで追突を極める。
となるが、これをヘソの向きで考えてみると、
- 一挙動目で右斜め横を向いていたヘソを正面に向ける。
- 二挙動目で正面に向けたヘソの向きを変えずに前に移動する。
となる。
ここでのポイントは、一挙動目に斜め右を向いたヘソを前に向ける際に、力の向きが右後ろから反時計回りに左横に向かっているという点である。
力が左側に向かっているのをグッと抑えることが出来れば、めでたく二挙動目でヘソが前を向くわけだが、一挙動目と二挙動目を一瞬で行う場合、どうしても左側に向かう力を抑えるのが難しくなり、結果としてヘソは左斜め前を向いてしまう。
これの対応策は「一挙動目で右足を左足の線上に持ってきた際にヘソを前に向けず、右斜め前のままにする」というものである。
右足を着地させるまで、ヘソは右斜め前を向いたままにすると、ヘソが左に向くほど動かず、ヘソはめでたく前に向いてくれる。
ヘソを右斜め前に向けたままキープするのが難しい場合には、右足の膝(もしくはつま先)を正面ではなく右斜め前に向けたままで移動をさせると良い。
僕たちは、動かす足の膝(もしくはつま先)とヘソの向きが一致するように出来ているため、ヘソの向きは動かす足の膝の向きでコントロールすれば良い。
この法則は非常に使える場面が多いので覚えておいて損はない。
形においては、例えば平安二段の16挙動目(左足前の逆半身による右内受)の際、左足を右から左に移動させるが、この際に左膝を右側に向けておき、着地と同時に前を向けると最後に腰を切ることになり、キレが出ることとなる。
組手においては、中段逆突きで腰が回らない人の場合、踏み込んだ前足の膝を外に向ける(オーソドックスで左足前構えの場合、踏み込んだ左足の膝を正面ではなく左に向ける)と腰が勝手に回ってくれる。
初心者に追突を教える際には分かりやすさのために、一挙動目でヘソを前に向けると教えた方が良いが、熟練者の場合には、ヘソの向きを変えずに移動することを練習した方が良いように思う。
そもそも、移動する際に腰が動いたら相手に反応されてしまうため、相手に攻撃を読まれにくくするためにも、左下段払いの構え、腰の向き、頭の高さを変えずに前に移動する方が理に適っていると考える。
そういう意味でも、ヘソの向きを変えずに前に移動して追突を打つというのは意味のあることだと思う。
日本空手協会の基本通りにもなるし、一石二鳥となる。
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